シカモア・・・この名前の聞いて思い浮かべる木はほとんどの人があのヴァイオリンの裏板やサイド及びネックに使われている美しい杢の出たメイプル(楓)だと思います。
ところが最近銘木屋さんで「シカモア」と称して売られている木にどう見てもこりゃあ楓じゃないだろうという木がありまして、板目面は少し赤味のかかった橡のように見えるし、柾目面には楓族には現れないレースウッドの様な斑点の杢があります。
(これはこれで、特徴的で、レースウッドのように焼けた感じもなく色白でとてもきれいで魅力的なんですが・・)
いろいろ調べてみると最近出回っているのはアメリカンシカモアでこれはカエデ科ではなくスズカケノキ族プラタナス科の木で学名のplatanusの英語読みがそのまま木の名前になったようです。
日本によくある「スズカケノキ」はモミジバスズカケノキという樹種でその葉っぱがモミジ(楓)の葉とそっくりな所から付いた名のようです。
ちなみにモミジとはもともと秋に紅葉する樹木の総称でその代表的なカエデのことを意味するようになったようです。
また「楓」という字は中国ではカエデではなくフウ(マンサク科)のことでこの漢字が渡来した時は日本にはフウの木はなかったのでカエデにこの字を充てたようです。
で、問題のヴァイオリンに使われるシカモア(ヨーロピアンシカモア)ですが、これはメイプルの仲間のグレートメイプルやオオカエデ、ニセスズカケノキで正式な流通名は「ホワイトシカモア」らしいです。和名は「セイヨウカジカエデ」です。
ヨーロッパ中部から西アジアにかけて産出され、中でもフランス産の物が最高と言われています。
材の産出量や流通コストの面から日本にはあまり入って来ないと思われます。(国内で流通しているメイプルはほとんどが北米産でしょう。)
気乾比重は0.54〜0.63で、北米産のハードメイプルや日本のカエデ(0.67〜0.7)に比べてやや軽く柔らかい。
そしてまたややこしいことに中央アフリカ産の「サテンシカモア」という木もあります。(アカテツ科のシルバーハートという木の波状杢の出た物をサテンシカモアと呼ぶ)
《サテンシカモアの例》
《波状杢の出たカエデ》
《カエデの小箱》
みんな、それぞれ美しい木ですから、本名で登場して欲しいもんです!